会合記録 ≪23年度連続公開講座≫

会合記録『10年20年後の総合安全保障』 (第2回渡瀬講座)

2023年9月9日(土) 15:00~17:50まで  3号館202教室

日本学術会議所属「地域デザイン学会」と共催。
学生、招聘研究員、ジャーナリスト、官庁、地方議員、一般社会人など当日参加を含め20名が参加した。

<テーマ 『10年20年後の総合安全保障』>

―最先端の事例に学ぶ総合安全保障のかたち―
企画趣旨:日本を取り巻く環境は極めて過酷なものだ。天災などの自然災害、安全保障上の危機、少子高齢化など、対応しなければならない問題は山積されています。今回、地域デザイン学会の原田理事長、慶応大学SFC研究所部谷直亮上席所員、当研究所から源田孝・渡瀬裕哉招聘研究員らによる最先端の事例を交えた講義を実施しました。

<講師>
原田保  地域デザイン学会理事長
部谷直亮 慶応大学SFC研究所上席所員
源田孝  早稲田大学公共政策研究所招聘研究員
渡瀬裕哉 早稲田大学公共政策研究所招聘研究員

<タイムテーブル>
テーマ 「10年後・20年後の総合安全保障」
プログラム

15:00~15:30 講演1 「10年後・20年後の総合安全保障の地域デザイン」
(一社)地域デザイン学会理事長 原田保
15:30~16:10 講演2 「ドローン等の最新テクノロジーと総合安全保障」
慶応大学 SFC研究所 上席所員 部谷直亮
16:10~16:50 講演3 「地域防災の観点から自衛隊との連携」
早稲田大学 公共政策研究所 招聘研究員 源田孝
16:50~17:30 講演4 「被災時の自発的なボランティアマネジメント」
早稲田大学 公共政策研究所 招聘研究員 渡瀬裕哉
17:30~17:50 総括 (一社)地域デザイン学会理事長 原田保

<講演概要>

①「10年後・20年後の総合安全保障の地域デザイン」
(一社)地域デザイン学会理事長 原田保
原田保理事長からは、10年後・20年後を見据えた総合安全保障のデザインには、ノーマル・アブノーマルという概念を踏まえて何が本質かを見極めることが重要であり、危機発生時にはアブノーマルなことが実装されており、その影響を受けつつも社会はノーマルな状況に再び戻っていく、その繰り返しの中で社会の発展があるという趣旨のご講演を頂きました。中長期の視点で見れば、まさにノーマル・アブノーマルの止揚を認識することが社会構築を実践する上で必要であることが確認されました。

②「ドローン等の最新テクノロジーと総合安全保障」
慶応大学SFC研究所上席所員 部谷直亮
部谷直亮氏からは、軍民の技術の垣根が次第に無くなっていく現代の安全保障環境について、現代戦の最先端で利用されているドローンを話題とし、その実装過程がまさに軍民のデュアルユースの産物であることをご講演頂きました。会場からは最先端のドローン技術の利活用について、動画を用いたインパクトがある説明に感嘆の声がありました。軍民融合・デュアルユースの時代に入っていることを認識し、軍事技術と認識されているものが実は民間で活用可能であり、その逆に民間技術として扱われているものが軍事転用される現実を強く認識させられました。様々なレベルでの生命・財産を守る活動について、技術の発展を常に追うことの重要性が確認されました。

③「地域防災の観点から自衛隊との連携」
早稲田大学公共政策研究所招聘研究員 源田孝
自らが空将補であった経験を踏まえつつ、地域防災において自衛隊がどのように活躍できるのか、またその課題とは何かについて論理的に整理して頂きました。会場からの感想として、「自衛隊による防災支援がどのように機能するのか」について非常に学びが深まったという声がありました。自衛隊が様々な法的制約の中で、何をどこまで実行することができるのか、そしてそのために地方自治体側がどのような体制を構築するべきであるのか、実践的な知見が豊富に含まれており、様々なアイディアが頭の中で想起させられる創造的な講演となりました。

④ 「被災時の自発的なボランティアマネジメント」
早稲田大学公共政策研究所招聘研究員 渡瀬裕哉
災害発生時におけるマネジメントの高度化を段階分けした講演が行われました。行政機関だけでなく、民間企業、自発的ボランティア、被災者までをスケールに含めた取り組みが解説され、将来像としてブロックチェーンを用いた自律的防災組織の在り方について紹介されました。マネジメントの発達過程において、どのような課題が発生し、それをどのようにクリアしていくのか、ということを順序立てて理解することで、自らの地方自治体がどのレベルに達しているかを確認できる内容でした。

<総括>(渡瀬裕哉)

今回のテーマは総合安全保障という極めて幅広い概念を扱うものでした。しかし、皆に共通したテーゼとしては、戦後から続いてきた過去のイデオロギーを捨象し、より柔軟なビジョンと姿勢を持って問題対処をどのように行っていけば良いのか、というものであったように思われます

特に自衛隊の活用等をテーマに含めたシンポジウムに対して、教条主義的なイデオロギー上の反発があることもしばしばあるため、今回のような実践的な観点から総合安全保障に関する公開講座が行えたことは極めて画期的なことでした。

その中で、参加メンバーに現役中堅世代(責任世代)の行政関係者、地方議員、ジャーナリスト、学生などの顔があったことが印象的でした。彼らは自衛隊の能力や軍民デュアルユースの現状等をありのまま受け止めて問題解決に取り組むことについて真摯な態度を示していたように思われます。彼らの世代がイデオロギーではなく、自衛隊や軍民デュアルユース技術の活用を前提とした現実的なソリューションを求めていることが確認されたと言えるでしょう。

国際環境、国内環境、技術環境は日々変化しており、あらゆる政策や技術は全て実践することを想定した上で、その弊害を取り除いていくことが重要です。そうでなければ、いざ天災や有事が発生したときに大義名分だけは立派ではあるものの、実際には何も対処することができない惨状が生まれてしまうことになります。戦後日本ではその手の事例が枚挙に尽きず、その都度心ある人々によって部分的な改善が少しづつ進められてきています。複雑化する現代環境の中で、我々は大人の議論を実践し現実的な対応を行う能力を持つことが必要です。より自由闊達な議論が行われることを切に望みます。

最後に、本講座の開講に関しまして、多大な尽力を賜りました、縣公一郎所長、事務局の羽田智惠子さんに感謝の念を申し上げます。