• トップページ
  • ご挨拶
  • 研究所紹介
    • 公共経営研究部会
      • 地域主権研究センター
    • 公共政策分析部会
  • アクセス・お問い合せ

書籍刊行のご案内『風景とローカル・ガバナンス―春の小川はなぜ失われたのか』

書籍『風景とローカル・ガバナンス―春の小川はなぜ失われたのか』(出版案内)

中村良夫/鳥越皓之/早稲田大学公共政策研究所 編 早稲田大学出版部

 

≪書籍刊行のご案内≫

このほど、本研究所が編者をつとめる書籍『風景とローカル・ガバナンス―春の小川はなぜ失われたのか』(中村良夫/鳥越皓之/早稲田大学公共政策研究所編)が早稲田大学出版部から刊行されました。ご案内いたします。

 

風景とローカル・ガバナンス―春の小川はなぜ失われたのか

 

≪内容紹介≫

いま、全国各地で「風景の劣化」に静かな悲鳴が上がっています。

頭上の首都高速道路とカミソリ護岸の日本橋川、暗渠化した小川、丘陵を削った住宅地、廃棄物の投棄された雑木林、耕作放棄地、空き店舗や廃屋。環境に根ざした生活の基盤、まさに風土そのものの喪失に至る事態が進行しつつあります。しかしながら、「その劣化を食い止める主体となるのは誰か」という問いへの解答は未だ見出せていない状態が続いているのが現状です。

本書は、この課題に対し、行政や様々な主体が相互に協調しながら地域課題の解決を図る統治のあり方を指す「ローカル・ガバナンス」が一つのヒントになるのではないか、という考え方を示します。そして、風景に関わる様々な学術分野の第一線の研究者が集い、「人々や社会とのつながりから風景を捉える。同時に、風景との関係から現在の個人や社会、社会参画のあり方を捉え直す」という共通の問題意識のもと風景劣化への処方をその根底から論じ、風景論の新たな射程を差し示そうと試みた書籍です。

 

以下では、三部構成からなる本書の内容を概観してみます。

 

まず、第一部「庭の思想にみる日本の風景」では、我が国を代表する風景学者である中村良夫により、古来「ニハ(場)」と呼ばれていた空間・風景への積極的な関わりが、日本的なローカル・ガバナンスの生成を促す可能性が示されます。

続く二部「風景をつくる主体」では、風景とそれを創る主体との関係が、コミュニティの支配権(鳥越皓之:環境社会学)、近現代日本の自治制度や住民参加(羽貝正美:都市行政学)、設計者の操作論的な景観創造の成果と限界(佐々木葉:土木デザイン論)、自立した現代的な主体の成立条件(西研:社会哲学)など、様々な学術分野から読み解かれていきます。

その上で、三部「風景をとらえる新たな手法」では、風景の人間的意味の本質観取(山田圭二郎・西研:景観工学+社会哲学)、風景と社会の相関構造分析(藤倉英世・山田圭二郎・羽貝正美:公共経営学+景観工学+都市行政学)など、学際的な研究をベースにした新たな風景分析手法が実践的に紹介されています。そして終章で鳥越皓之が、環境社会学の立場から各章の内容に分析を加えつつ独自の視点で風景とガバナンスのあり方についての議論を進展させています。

 

なお、本書の「はじめに」では縣公一郎(公共政策研究所長)がドイツの風景を保全する行政的制度とその主体の関係を、「おわりに」では塚本壽雄(公共経営研究部会長)が風景の課題と公共経営、ローカル・ガバナンスとの関係を簡潔に示し、本書の位置づけを明らかにしています。

 

≪書籍の目次≫

はじめに――ドイツを手がかりとして(縣公一郎)

序論 いま、風景とローカル・ガバナンスを問う(藤倉英世)

 

【庭の思想にみる日本の風景】
第1章 山水都市の運命を担う市民社会(中村良夫)

 

【風景をつくる主体】
第2章 コミュニティが支配権をもつ風景――そこに住む者が風景をつくる(鳥越皓之)

第3章 住民参加の手づくり公園が風景に変わるとき――二つの「きょうどう」から生まれるもの(羽貝正美)

第4章 風景の破壊と再生のはざまで――土木の景観論のめざすもの(佐々木葉)

第5章 自治の主体の成立条件と風景――人はどうやって風景を育む主体となるか(西 研)

 

【風景をとらえる新たな手法】
第6章 風景の人間的意味を考える――「なつかしさ」を手がかりに(山田圭二郎・西 研)
第7章 風景分析のための方法とその成果――旧開田村の事例を対象に(藤倉英世・山田圭二郎・羽貝正美)

終 章 現代社会にとって風景とは(鳥越皓之)
おわりに(塚本壽雄)

 

≪執筆者(専門領域)≫

中村良夫  東京工業大学名誉教授(風景学)

鳥越皓之  早稲田大学人間科学学術院教授(環境社会学)

羽貝正美  東京経済大学現代法学部教授(都市行政学)

佐々木葉  早稲田大学理工学学術院教授(景観論・土木デザイン論)

西  研   東京医科大学哲学教室教授(社会哲学)

山田圭二郎 京都大学工学研究科特定准教授(景観工学)

藤倉英世  早稲田大学公共政策研究所招聘研究員(公共経営学)

縣公一郎  早稲田大学公共政策研究所所長 早稲田大学政治経済学術院教授(行政学)

塚本壽雄  早稲田大学公共政策研究所公共経営研究部会長 早稲田大学政治経済学術院

教授(行政学)

 

≪出版の経緯/風景と公共経営≫

公共政策研究所(公共経営研究部会)では、昨年11月23日にシンポジウム「風景とローカル・ガバナンスを問う」を開催しました。

 

当該シンポジウムは、ローカル・ガバナンスの担い手となるべき一般市民、建築家、国や自治体職員、コンサルタント、NPO、研究者や学生など、150名以上が一堂に会し議論するという画期的なものとなりました。そして「風景の劣化は、住民や社会の劣化そのものではないか?」という問題意識が共有されました。さらにシンポジウム懇親会では、話題が一歩進んで、地域の実践的な活動に資するために、今後、①具体的な理論と実践事例の紹介、②各研究分野の間での意識の摺合わせ、が必須ではないかとの意見が聞かれました。

 

こうした意見を踏まえ、中村良夫、鳥越皓之、公共政策研究所が編者となりシンポジウムのパネリスト全員を著者とする書籍発刊のプロジェクトが始動しました。以降、著者全員が早稲田大学出版部の会議室に集い議論をくり返した結果、2014年6月末、『風景とローカル・ガバナンス:春の小川はなぜ失われたのか』(早稲田大学出版部)の刊行にこぎ着けました。

 

本書の「あとがき」で塚本壽雄(本研究所公共経営研究部会長)が指摘しているように、本書の重要な貢献の一つは「風景と人あるいは環境と人との関係性という共通の視座に立って、ローカル・ガバナンスの最も重要な主体である住民に向けて、風景を守り、創っていくことはどういうことか、そのために何が変わらなければならないかを示唆する」、という公共経営的視点を風景の課題に導入した点にあるといえるのではないでしょうか。

 

≪ご意見、お問い合わせの窓口≫

本研究所では、各著者が渾身の力を投入した本書を介し、風景劣化の歯止めや創造に関わる全国各地の人々との交流、意見交換の場を共有出来ればと願っております。また、今後も公共経営的な視点から、風景のローカル・ガバナンスの研究、シンポジウム企画等を続けていきたいと考えております。

 

◇本書へのご意見、ご感想は、以下のaddressへお願い申し上げます。

h.fujikura@kurenai.waseda.jp

◇早稲田大学出版部HPの以下のアドレスで、①本書の紹介、また、②お問い合わせ・ご注文、を承っております。

①本書の紹介: http://www.waseda-up.co.jp/newpub/post-703.html

②問い合わせ・注文先:http://www.waseda-up.co.jp/howtobuy

(招聘研究員 藤倉英世)