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会合記録 『連続公開講座「身近な地域から公共政策を考える」第5回』

2020年7月25日(土)14:00~16:50 
第5回目の公開講座は前回に続くオンラインにより番外編として開催しました。
ミニシンポジウムのスタイルで講演と講師を4名としたので、協力体制を組むため
スタジオとして日本記者クラブの会議室を借りて開催しています。
縣所長と招聘研究員9名、ゲスト参加者10名を加えて20名による会合でした。

 

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(1)概 要

テーマ:『コロナから見えてきた課題と先を考える』

講 演:(研究所長) 縣公一郎

    (招聘研究員)大原透・羽田智惠子・渡瀬裕哉

進 行:藤倉英世(ファシリテーター)

司 会:泉澤佐江子

 

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13:00~  研究員集合(時間厳守)、受付準備等
 (13:45から入室許可)
14:00〜  開会(進行の案内、zoomの説明、講演者紹介)
14:10~14:25  縣所長講演
14:25〜15:00  プレゼンテーション(大原、羽田、渡瀬 各約10分、合計35分)
 *各プレゼンテーションの前に講師紹介
15:00~15:05  第2部の論点の提示。質問事項のお願い
 *チャットで受付。記載方法など
15:05〜15:20  休憩(質問受付)
 *質問事項の整理
15:20~  第2部開始、ファシリテーター紹介
15:25~16:05  パネルディスカッション(40分)
 (藤倉、講演者)
16:05~16:50  参加者を交えた議論・まとめ(40-45分)
 (藤倉、講演者、ファシリテーター)
16:50  終了アナウンス

 



(日本記者クラブにて)

 
 
(2)全体テーマ

『コロナから見えてきた課題と先を考える』
―株式市場・学校教育・米国の政治参加の視点からー

 

(3)≪講 演≫ 縣公一郎

 

早稲田大学政治経済学術院教授 早稲田大学公共政策研究所所長
国際行政学会副会長  日本行政学会顧問

 

『感染症対応の概要-日独概括比較から』

 

≪講演内容(概要)≫

 

 『感染症対応の概要-日独概括比較から』と題し、(1)感染症対応のシェーマ、(2)感染の推移とそれへの対応、(3)対応の日独概括比較、及び(4)対応体制の特徴の四節を以て、現下の感染症に対して、日独両政府が如何に対応してきたのかを概括比較し、その特徴を明らかにすると共に、日本において今後望まれる体制について講演した。

 (1)では、対応策に関して、国内/国際策、及び給付/規制策の区分に基づいたマトリクス分類を基盤に、出入国管理、行動規制、経済支援、医療政策、及び緊急事態宣言を一般的に区分し、シェーマを概説した。

 (2)では、感染を示す数多くの指標の中で、最も一般的である感染者数とその七日移動平均を用いて、日独両国の状況を描写したのち、感染推移と上記シェーマに基づく各対応策の展開を、20年1月後半から7月後半にかけて、概観した。その際、日独両国とも、緊急事態宣言ないし連邦首相宣言をエポックとして、宣言以前、宣言以後、そして宣言解除後の3フェイズに区分し、両国の対応策の展開を概観した。その際、ドイツにおける連邦と各州の協調的な対応と、日本における中央と地方の自律的な対応の対比を強調した。

 (3)では、両国の具体的な対応策に関して、包括的特徴、関係組織、根拠法、これらの比較に基づきながら、上記四対応分野を比較し、規制緩和策を含めて、両国の特徴を明確にした。そして、(4)では、上記の概観に基づき、両国の対応体制を、政府間の協調性/自律性、及び対応策の一元性/多元性の区分に基づくマトリクスにて分析した。ドイツでは、連邦と各州の協調的な意思疎通に基づき、状況に応じた一元的、ないしは多元的対応が為されている、と判断されるのに対して、日本では、中央と地方相互での自律性が高く、状況に応じて必要な一元的、ないし多元的策が、必ずしも斉合的に為されていない可能性を示唆した。

 リスク管理上は、状況に応じて一元的対応策が必要な場合があり、それは自律的にも協調的に為され得るが、多元的対応策を講ずる場合、アクター間の協調的な行動が為されなければ、多元的対応策相互に矛盾や格差が生じてしまう可能性がある。それゆえ、一元性の下で多元性を包括するような、トップダウンとボトムアップを組み合わせた協調的な意思疎通に基づく対応策が必要となる場合があるだろう。

 

≪質疑応答≫

 

Q:日独の政府対応の相違には、両国間での中央と地方での権限配分の相違が反映されているのではないか?
A:今回の感染症対応では、ドイツでは連邦感染症防止法が、日本では、感染症法及び改正新型インフルエンザ等対策特別策法が、それぞれ対応策の根拠となって居り、いみじくも、日独両国とも、具体的な対応策の主体は地方政府となっている点が共通している。しかしながら、対応体制に相違が生じているのは、政府間での協調的な意思疎通を具体的な意思決定メカニズムの中で図ろうとするか否か、という具体的運用の相違に求められる。もし、協調的な意思疎通によって相互矛盾の少ない多元的対応策が講じられ得るとするならば、元来、そうした協調性を伴った運用体制を構築するべきであろう。

 

≪講座を終えて(講師所感)≫

 

日程設定への考量が十分ではなかった点を反省し、今後、より多くの方々に講演会に
ご出席頂けるよう、日程選択及び広報充実に対し、従来以上に配意すべきであろう。

 

 

 

(4)≪プレゼンテーション≫

大原 透

(独)中小企業基盤整備機構 運用アドバイザー
小田急電鉄(株) 社外取締役

 

『株式市場が予測するコロナ後の未来』

 

≪講演内容(概要)≫

 

 「株式市場が予測するコロナ後の未来」と題し、(1)株式市場が未来を予測する能力を持っていると考えられること(2)コロナウイルスの発生後、株式市場はその予測能力を発揮し国家間、業種間、企業間で株価の動きに大きな格差が生じたこと(3)その格差が示す株式市場が予測したコロナ後の未来はどんなものであるのか(4)その中で明らかになった日本の弱みは何か(5)コロナパンデミックが投げかけた世界の変化、について講演した。

 (1)では①米国ナスダック市場が、2000年のいわゆるITバブル期の1年足らずの間に15年分のインターネット市場の発展を予測し株価に織り込んでしまったこと②スペースシャトル、チャレンジャー号の爆発時に株式市場が30分で事故原因となった企業を割り出したこと、の2例を挙げて株式市場が予測能力を持つことを示した。
 (2)ではコロナショックで株式市場が一斉に暴落した後、世界の感染者数が20万人以下の3月の段階で(7月末は1700万人)株式市場は上昇に転じたが、国家間、業種間、企業間でその戻り方に大きな差が生じたことを示した。具体的には国家間では米国が先行し、業種間では医薬(バイオ)ハイテク産業が先行した。

 (3)では3月から大きく上昇し始めた銘柄が、非接触、遠隔操作、またEコマース、キャッシュレスにかかわる企業群であったことを示し、株式市場がコロナを受けて、今後の成長産業を探り当てようとしていることを論じた。 
 (4)次にコロナで露呈した日本の弱みについて論じた。具体的には「行政、教育、医療」といった点で日本の弱みが明らかになり、それがデジタル化の遅れによってもたらされたのでないかとの見方を提示した。これは日本が「モノ作り日本」にこだわるあまり、世界の潮流となっている「ソフト、データ、システム、ブランド」といった無形資産への投資を怠ってきたことに原因があるのではないかとの指摘をした。

 (5)では総括的にコロナがもたらした社会的変化において気にかかる点を4点挙げた。それは①格差の拡大で、個人の経済的格差のみならず、国家、業種、職種、教育など広範囲で格差が一段と広がっていく可能性②給付金、大規模金融緩和など世界的に政府にリスクの肩代わりを期待する動き、管理社会を容認する動きが芽生えている点③ここまで進んできたグローバル化を否定するナショナリズムが昂進していること④都市集中のリスクの顕在化、の4点である。

 

 ≪質疑応答≫

 

Q.不動産価格の暴落はありうるのか
A.現状、都心のビルを有する大手不動産会社の株は極めて鈍い動きをしている。テレワーク  
の進展などでオフィス需要が急減することを株式市場が予測しているともいえる。都心の不動産の収益性は悪化し都心の不動産価格は下がるかもしれない。但し、①オフィスで働く人が減っても「疎」の状態を保つためには広いオフィスが必要②都心オフィス需要は減っても、郊外サテライトオフィスは伸びる(自宅での仕事は無理な人は多い)、との見方もあり不動産会社の株が下がり続ける事態は想定しにくい。もちろん人口が半減するような未来には不動産価格は下がっているだろう。

 

≪講座を終えて(講師所感)≫

 

やはり出席者が少なかったことに対する反省が大きい。4連休の最中という日程設定に対する検討や出席者の票読みをより精緻にして、集客活動のレベル感をしっかりと確認し合うことが必要だったのではないかと自省の意味も込めて感じた。

 

 

 

羽田 智惠子

一般社団法人 途中塾 代表理事

 

『コロナ一斉休校で見えた「箱入・横並び教育」の限界と未来の学校』

 

≪講演内容(概要)≫

 

① コロナ一斉休校とその権限
 2月27日、安倍総理が3月2日~ 国公私立の小中高と特別支援学校(36.000校・約1300万人)を対象に、臨時の一斉休校を要請した件、本来は学校の設置者(自治体の教育委員会)に権限がある。そもそも2月27日のコロナ陽性患者は、全国で156名。東京は33名であり、該当する都道府県は16で、残り31県は該当者ゼロであった。日本の学校は長らく中央集権で自治体の意思は働かない。戦後の経済成長の時代は大きな役割を果たしたが、現代に至って「横並び教育」は限界に来ているように思う。

② 学校は本来何を学ぶところなのか?
 学校教育法(1947年)によると、小学校については『学校内外の社会生活の経験に基づき』、『郷土及び国家の現状と伝統について』などとあり、中学校については『社会に必要な職業についての』と記載され、高校については『国家及び社会の有為な形成者として』とある。学校は仲間と社会をつなぐ人生のコミュニティであり、やがて市民・納税者として社会を支える術を学ぶ場であるはずだ。としたら、大多数の感染者ゼロの市町村では休校せず(今は感染者が全国に広がる状況下で学校が再開されている)教科に限らない広い学びができたのではないか。学校の教室が「三密」であるのなら、発展途上国のように広場や街中、青空テントの元で距離を保ちながらの学びもできる。

③ アフターコロナの社会を想定すると
終身雇用は終わり、AIやロボットにない技を磨いて、一人一人が雇用に頼らず屋台を引いて生きていくことが求められる。教室という箱に入って長年のパターンで教科だけを学んでいる場合ではないだろう。

④ 日本の学校教育を世界と較べると
自分の将来や就きたい仕事のために学習する仕組みや意識に欠けがちで、将来の希望を実現するための学びへと変えていく必要がある。教師の指導力の向上、親の意識改革をしながら「シチズンシップ教育」が重要だ。

⑤ 近未来の学校を考える

今までの学校はテストと成績評価を中心軸にし、特に都市部は受験のための暗記学習になりがちだ。超高齢社会になり、今ある仕事の半分以上がAIやロボットに代替される「脱労働社会」に向う折、しかも人口急減で国力の低下が予測される中、一人一人が精一杯輝いて、自分に沿う希望を持てるよう、原石を磨いて社会が支えることが教育だろう。『勉強は教室で』と『教員免許ありき』を脱して、社会をより広く深く体験した各業界のプロたちが社会への先導役として教育に関わってほしい。

 

≪質疑応答≫

 

Q:「教室を社会の現場に広げる」ということに関して、公教育として実践している事例や、
 なぜそこの教育委員会は前例や制約を超えてそういう取り組みができているか?
A:2000年から「総合的な学習の時間」として「探求」を軸に徐々に広がりつつあるし、社会見学や外部講師による講座は珍しくない。千代田区立麹町中学校は工藤勇一校長の学校改革が注目され、従来当たり前とされてきたことをやめて生徒の自発性に任せた。
① 宿題の廃止、②定期テストの廃止、③クラス担任制の廃止、④私服OKなど。
これらができる根拠として、文部科学省が示す指導要領からそれず、教育委員会が承認すれば可能ということだ。国の組織に近い、国立大学附属小・中・高校は古くから私学より自由な学校運営が顕著で社会の現場に近いが、そのことが問題になることはない。

 

≪講座を終えて(講師所感)≫

 

 ZOOMを使う講師役はパソコンを稼働させながら資料を提示するなど、作業量が多くて厄介であった。今回、講師3名と事務局2名がスタジオとして記者クラブに参集したことは、ことあれば・・の協力体制として安心感があった。ハウリングの問題を心配する声が出たが、記者クラブから「全員スピーカーの音を出さないようヘッドフォン使用」を助言され、ハウリングが生じなかったことは幸いであった。
 多くに声をかけたが参加者が少ないことは残念だった。ZOOM講座は不慣れな人には誘いがたく、受講者にも厄介であろう。個人的には25日を終えて後、テレビ局でのミーティングや弁護士との意見交換に(自分の)パワーポイントのデータを提示してテーマを拡散した。コロナ禍でライブができがたい時には、サブ的なミニ会合でテーマを投げかけることも貴重な手法になると思われる。

 

 

渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研 代表取締役所長

 

『アメリカにおける政治参加へのコロナの影響と今後』

 

≪講演内容(概要)≫

 

 「アメリカにおける政治参加へのコロナの影響と今後」と題し、トランプ政権の選挙戦略に与える状況を概観し、インターネットを活用した集会及び選挙運動員トレーニング等についての報告を行った。

 トランプ大統領はラリーと呼ばれる大人数を動員した集会を選挙戦略の基本として据えてきたが、オクラホマ州タルサで実施したラリーが通常のケースよりも遥かに少数の人数しか集められず、新型コロナウイルスの感染懸念などの問題を引き起こした。現在では、フロリダ州のジャクソンビルで開催する予定であった共和党党大会なども中止となっている。

 これに対して共和党側は屋外でのラリー(ヨット集会やボード集会)などを行ったが、現実には政治空間のネット上のコミュニケーションへの移行が急速に進みつつある。トランプ大統領の選対本部長ブラッド・パスケール氏(7月15日上級アドバイザーに移動)は、トランプ陣営をSNSを中心としたキャンペーンに移行させるとともに、ネット上で選挙ボランティアに対する教育システムを普及していた。このような変化の背景には米国においては選挙の仕組みがマニュアル化されており、ネット上への速やかな意向を実現だけの素地があったことがある。

 一方、6月末に実施された民主党陣営のイベントはオバマとバイデンによる初のヴァーチャル演説会であった。75,000人の小口寄付者から760万ドルを調達しており、120,000人のユニーク視聴者、10,000人のボランティア獲得、1,500件のグッズ販売が行われた。更にはインタスタグラムなどの若者向けのSNSでもインフルエンサーとの提携関係発表している。民主党側のネット献金プラットフォームであるActBlueは直近1年半で2000億円相当の寄付金を集めている。

 

≪講座を終えて(講師所感)≫

 

他発表者との共通点として、重要なことはこのような変化は突如生じたものではなく、新型コロナウイルス問題が事態の変化を加速させたものと捉えることが妥当だと改めて気が付いた。不可逆的な変化の流れが起きていると言えることだろう。

 

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以上