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会合記録 『連続公開講座「身近な地域から公共政策を考える」 第4回』

2020年5月16日(土)14:00~16:10まで。    
第4回目の公開講座は
渦中にある新型コロナウイルス対策のため、オンライン会議により開催しました。
縣所長と招聘研究員9名、ゲスト参加者12名を含めて22名が参加。(後半は18名)

 

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講義の様子の写真1

 

(1)概 要

講 師   源田 孝(早稲田大学公共政策研究所招聘研究員 元防衛大学校 教授)

『災害多発時代を生き抜く知恵と新たな防災文化の創造』

―「公助」「共助」「自助」と回復力―

進 行   藤倉英世 (ファシリテーター)
司 会   泉澤佐江子

 

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≪タイムスケジュール≫

 

13:30~             研究員集合(時間厳守)、受付準備等
                        *随時、受付(入室許可)
14:00〜             開会アナウンス(進行の案内、zoomの説明)(司会)
        ~14:15     縣所長より挨拶(コロナ禍下での開催について)
14:15〜15:05   講師プレゼンテーション(50分)
15:05~15:10   質問方法の説明 (司会)*チャットで受付。記載方法など。
15:10〜15:20   休憩(質問受付) →質問事項の整理。メールで配信(星野)
15:20~15:25   第2部の説明(司会)
15:25~16:05   質疑応答(40分)(藤倉)
16:05~16:10   終了アナウンス(司会)

 

講義の様子の写真2

 

(2)講演内容

 

第四回となる本講座では、自衛官として長年にわたり危機管理の現場で活動してきた経験を踏まえて、常日頃から抱いていた問題を提起するとともに、いくつかの提案を試みました。

気候変動と荒れる気象、大規模災害、地震が多発していることを踏まえ、日本の防災の現状分析とそのあり方について考えをめぐらした結果、「公助」、「共助」、「自助」の各ステージで政策を展開することによって、災害多発時代を生き抜く知恵と新たな防災文化を創造することを提唱しました。

 政策の展開に際しては、比較の視座として、イタリアにおける災害対策と避難所設備、韓国における避難所設備、そしてダイナミックなオペレーションを行う国家的防災組織としてアメリカの「緊急事態管理庁(FEMA)」を紹介しました。

また、災害の被災者に対する対応基準の参考として「国連難民救済スフィアプロジェクト」を紹介し、日本の被災者は国連が規定した難民に対する基準すら満たしておらず、人道上の問題があることを指摘しました。そして、新たに『災害難民』という造語を提示し、被災者や社会的弱者に対する「人間としての権利と尊厳を保障する」必要性を主張しました。

 

≪論点は次の点です≫

 

1. 不測事態に遭遇したとき、脳の防御作用で「ありえない」という先入観と偏見(バイアス)が働き、非常を正常と誤認識して危険にさらされる「正常性バイアス」に注目し、「正常性バイアス」を直視して克服する必要があります。

 

2. 最も重視したのは、「個人」あるいは「家族」単位の「自助」です。「神は自ら助くる者を助く」ではありませんが、自らが防災に対して努力せず、被災者となった場合に行政に全てを任せることを批判し、「自助」によって災害に積極的に対処することにより、同時に「共助」も実行できることを指摘しました。

 

3. 私の提案では、国家レベルでは約1兆円、市レベルでは約1億円、個人レベルでは約30万円の予算が必要です。しかし、災害は「いつ発生するか」、「どこに発生するか」、「被害はどの程度か」の見積もりが不明なためこれらの予算要求が困難で、そして、仮に資材を準備しても長期間使うことがなければ「無駄」と批判されることが予想されます。しかし、防災の観点からは、これらの予算は「価値ある無駄」であることを主張しました。

 

(3)質疑応答

 

≪質問1≫ イタリアの様な設備を日本の各自治体で実現するには何が必要ですか?
≪回 答≫ イタリアの緊急事態対策、防災組織、防災設備の主体は「国」であり、自治体は被害地域に展開してくる国の緊急対策部隊を受け入れるだけです。日本では、どちらかといえば、広域の場合は「県」、狭域の場合は「市」です。日本の各自治体の体力を考慮すれば、イタリアの様な組織と設備を日本の各自治体で実現することは困難と思います。

 

講義の様子の写真3

 

≪質問2≫ 社会的な格差の問題はどのように位置付けることが必要ですか?
≪回 答≫ 被災者の対応に社会的な格差は無用と考えます。かつて、あったケースですが、ある自治体では住民票の無い被災者には支援物資を配布しませんでした。外国人等を含め、被災者は分け隔てなく対応すべきと考えます。

 

≪質問3≫  特に中央省庁で災害の会議室対応と政治家のIT情報収集能力は?
≪回 答≫ 現状を観察すれば、中央省庁で災害の会議室対応はよくできていると思います。大臣のIT情報収集能力についてですが、もともと政治任命された大臣は専門家ではないので、スタッフに専門家による組織を設けることになります。

 

≪質問4≫ 「コロナと水害」のような複数の災害が重なった場合は?
≪回 答≫ 私もまったく同じ懸念があります。昨年度、千葉県に台風15号と台風19号が連続して発生しました。不運としかいいようありませんが、どうしょうもありません。

 

≪質問5≫ 自衛隊の装備、予算は?
≪回 答≫ 自衛隊では災害対処は任務の一つと位置付けられています。県知事から災害派遣の依頼があれば出動します。自衛隊の特徴は、移動手段、宿泊場所、食事などすべて自前で準備し、自治体に迷惑をかけないことです。現在、最も頼れる組織だと思います。

 

≪質問6≫ ドイツ型の地方分権の国家と日本のような中央集権国家の対策の相違、優位点は?
≪回 答≫ やはり、日本では国が全国的な災害対策のオペレーションを行える組織を整備すべきと思います。

 

≪質問7≫ 韓国の防災設備の現状は?
≪回 答≫ 韓国は特に質の良い、安価なキャンプ道具がそろっていることで知られています。避難所はあたかもキャンプ地のようになります。多いに参考にすべきと思います。

 

講義の様子の写真4

 

≪質問8≫ 正常性バイアスの克服について?
≪回 答≫ 正常性バイアスを克服するには、「いざという時のために準備する」、「事前訓練を重ねて有事に訓練と同じ行動をとる」、「何をしたらいいかを見極める判断力を養う」です。

 

(4)講座を終えて(講師所感)

 

オンライン会議による連続公開講座は初めての試みでしたが、関係者の綿密な調整と事前準備によって無事成功しました。このことは、本連続公開講座の未来の姿を暗示したものと思います。
質疑応答では多岐にわたる質問があり、講師としては多少の手ごたえがあったものと考えております。とりわけ、諸外国の防災の例を比較の視座として紹介することによって、日本の防災の問題点を明らかにしたと感じました。

 

以上(今回は下にオンライン講座に関する特記があります)

 

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(特記)WEB講座初挑戦の事務局所感

 

≪修正を加えることに労力がかかった≫     事務局:泉澤佐江子

コロナ禍の下、ステイホームが堅守される中で初めてのオンライン開催でした。通常の講演会開催の手順を重ね合わせながらオンラインに応用していくイメージで準備を重ねましたが、やり方そのものがわからない中での試みであり、WEBでの打ち合わせを繰り返すたびに、疑問や不明点が増えていく印象でした。事務局内でも人それぞれのイメージがあり、そのズレを明らかにして、修正を加えることに最も労力がかかった思いがします。
しかしながら、状況や時勢に合わせて柔軟にやり方を試していくことは、多様な公共、絶えず変化していく地域社会を考える点でも大変な学びとなったと感じており、参加者の皆さんは、進行上の多少のもたつきは、優しく受け流してくれていたように思いますが。
まずは試してみること、やりながらブラッシュアップしていくことが大切だと感じました。

 

≪参加者の満足度が次回への課題≫   ファシリテーション:藤倉英世

本講座初となるon-line環境での実施では、参加者との質疑、討議の深度をどの程度確保できるのかが課題であった。この課題に対応するためファシリテーションは、以下の手順で実施した。
① .事前に主要論点を3点に絞り込んで提示し、質疑応答前に参加者から「チャット」で意見を頂き、その意見を軸に、まず、ファシリテーターが講演者へ質問を行った。
②.上記①に対する講演者の回答に対し、参加者と講演者が直接、質疑応答を行い、議論のレベルを深めた。
以上の結果、相当程度踏み込んだ意見交換が実施できた点には一定の手ごたえを感じた。その一方で質疑に参加できなかった参加者の方々がon-line環境の中で、どの程度の満足度をえることができたか検証する作業が、次回講座に向けての課題として残った。

 

≪生放送として視聴・参加者を惹きつけたか≫ ディレクター役:羽田智惠子

普通、オンライン講座はリアルな対面型をインターネットでPC画面に置き換えるものと考え、講義の内容とシステム対応に集中しがちだが、参加者が眼の前にいるライブとは臨場感に大差がある。主催者も参加者も個室のテレワーク状態にいて、会場のみんなを見渡すことも、空気や匂いを感じることもなく、休憩に雑談を交わすなど場を楽しみにくい点で、生命感に乏しい画面に向き合っていることを念頭におきたい。『講師や進行担当が正確に情報を伝えやり取りすれば上出来』は発信者側の考え方だろう。無機質なPC世界を補うため視聴者を惹きつけるエンターティメント性がリアル以上に求められるのではないか。
講座本番では(受け手の立場から)これは『視聴者限定の生番組』であり『生放送』との思いを強くした。初めての試みで事務局中心に進行役も技術のサポート役も精一杯の努力を重ねてきたし、講師の講演は長い現場体験に裏付けられた優秀な内容であり、Q&Aも的確なリードで進んだのではないか。ただし、受け手の視点で『生番組』として顧客満足度(質)を勘案すると、事務局を含めた総合点として数割のマイナスが生じるように感じている。

 

≪参加型『生番組』として考える基本的な課題とは≫

① 主役級の出演者たちは番組の基本:人に訴える鮮明な動画や音声を提供できたのか。
(わが子の家庭教師をオンライン講座で頼むとして、画面の指導者の顔や表情が分かりにくく無頓着な場合※、親は相手を信頼できるか、子どもは集中できるのかと同じ問題)
② オンライン講座は生の交流がない分、リアルより一層の授業モデルの改良を求められる。参加者の満足度を向上させるため、一方通行を避け、対話型のワークショップの導入を含めて、演出にどうエンターティメント性を取り入れるのか。 

※主な出演者は照明の調整等カメラテストが必要。外付けカメラは安価多く取り付け簡単。

 

講義の様子の写真4