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調査rep12「ノースカロライナ州の市民教育」

1.学校における市民教育について

 米国の学校における市民教育は多様であるため、ここでは一例としてノースカロライナ州シャーロットの一つの学校区Charlotte-Mecklenburg Schools (CMS)における「リーダーシップと国際教育」(Center for Leadership and Global Studies)を採りあげる[1]。「リーダーシップと国際教育」は、公立学校において生徒に特別な学習環境と革新的な指導を与えることを目的としたマグネット・プログラム(Magnet Program)の一環として教えられている。

「リーダーシップと国際教育」はグローバル・コミュニティーにおいて貢献することができるリーダーを育成することを目的としており、2012-2013年度では幼稚園から小学校5年生までに対して教えられている。主な学習内容の特徴は次の通りである。

 

図表 「リーダーシップと国際教育」の特徴

l  生徒が知力、責任感、倫理観を持つリーダーとなる総合的なカリキュラムを提供するl  幼稚園から世界の言語に触れるl  ノースカロライナ州の公立学校で初めてアラビア語のプログラムを提供l  学校は生徒が人格の発展、チームワーク、リーダーシップスキル、倫理的な意思決定を学ぶことができるような地域の学習環境を提供する。l  IBMや国際企業、高等教育機関と連携

l  インターネットを使って世界中の生徒と交流、異文化間の対話を行うなど、先進技術を用いたコミュニケーション能力を磨く

資料)Charlotte-Mecklenburg Schools ホームページ

http://goo.gl/sptNx

 

 模擬選挙や海外の生徒との交流等の多彩なプログラムが用意されているが、その中でも特に市長との交流が主なプログラムの一つとなっている。市長は市議会で議論されている地域の具体的な問題(交通、ごみ処理等)を採りあげ、生徒は学期中、その事項に関する議会を公聴し、自主研究、市長との対話を通じて、実際の政治を学ぶことができる。

子供が「リーダーシップと国際教育」を履修すべきかどうか迷う親に対して、次のような質問を行っている。当てはまる質問が5つ以上ある場合には、「リーダーシップと国際教育」は子供にとって相応しい教育を提供できるとしている。質問内容:「子供はリーダーシップの素質があるか、又はリーダーシップ術に関心があるか」「知的好奇心があるか」「世界市民であるアメリカ人としてのアイデンティティーに対する理解を深めたいか」「自由市場が国際関係に与える影響を理解したいか」「通常の課程外の教育にコミットできるか」「十分な母国語の活用能力を有しているか」「一人で独立して、またグループで働くことができるか」

 

 同プログラムでは、市民としての役割を地域に対してのみならず、世界市民として国際社会に対する貢献という観点から、相応しいリーダーシップ育成、必要なコミュニケーション技術の習得等を目的としている点が注目できる。ここで取り上げる事例は一例であるが、こうした地域、国家、国際社会に貢献することを目的とした人材を育成するという理念が、アメリカの市民の政治、市民参加に対する姿勢に影響を与えていると思われる。

 

(参考資料)

l  Charlotte-Mecklenburg Schools (CMS)ホームページ

http://www.cms.k12.nc.us/Pages/Default.aspx

l  Summer in the City Program, A Partnership Between Harvard University’s Institute of Politics and the U.S. Conference of Mayors “POLITICAL EMPOWERMENT AT THE LOCAL LEVEL:A Review of Youth Civic Engagement Efforts in 11 U.S. Cities”

http://www.iop.harvard.edu/var/ezp_site/storage/fckeditor/file/pdfs/Research-Publications/city_report_04.pdf

 

2.市民の政治行動と手法について(①及び②)

 下記の図表はアメリカ国民の各種活動への参加率を、1950年代から2000年代の期間で時系列による推移を示したものであるが(アメリカの政治参加研究で有名なカリフォルニア大学アーバイン校ダルトン教授(Professor Russell J. Dalton)による。グラフは左から、「投票」「選挙キャンペーンへの参加」「市民団体に参加」「請願書等に署名等を行う」「抗議運動に参加する」「地域社会の活動に参加する」)、「市民団体に参加」「請願書等に署名等を行う」、「抗議運動に参加する」「地域社会の活動に参加する」が増加傾向にある一方で、「投票」は減少傾向にあるなど、アメリカ国民の政治参加の方法が変化していることが分かる[2]

 これらのデータは米国内を対象として調査結果から得られたものであるため、日本との統計上での比較はできないが、「抗議運動に参加する」「地域社会の活動に参加する」等、実際に地域で身近にできる活動に従事することは、アメリカの政治参加の一つの特徴と思われる。アメリカでは、一般市民がこうした活動を行う際に、様々な団体が地域社会の中で活動をしているため、日本社会と比較して参加をするにあたってのハードルが低いと思われる。つまり、日常生活や地域社会でアメリカ国民が政治的な活動をしようと思った際に、そうした活動をするための団体が見つかりやすいのが、アメリカ国民の政治参加を促進している一つの要因になっていると思われる。

図表 アメリカの政治参加トレンド

資料)Russell J. Dalton(2006),

“Citizenship Norms and Political Participation in America: The Good News Is … the Bad News Is Wrong”

http://www8.georgetown.edu/centers/cdacs/cid/DaltonOccasionalPaper.pdf

 

 例えば、2011年9月以降ニューヨーク市のウォールストリートにおいて若者を中心とした資本主義の歪みに対するデモが繰り広げられているが、インディアナ州の小都市であるブルーミントン市(人口約8万人)においても、街の中心となる人民公園で同様のデモが行われている。ブルーミントン市に立地するインディアナ大学の学生新聞によると、デモンストレーションというような騒然としたものではなく、大人数でのピクニックのような雰囲気で静かに開始されたという[3]。そこでは通常大学内や街で見かけるような学生、一般市民がプラカードやメッセージをもち、公園に集まり、デモンストレーションに参加した。雰囲気としては、新聞も描写しているようにデモンストレーションというように荒々しいものではなく、意見を示したい人が、気軽に公園に集い、静かに社会や世の中に対する自分の意思を示すという雰囲気の方が近いかもしれない。また、参加者同士では参加者間の結束を示すために集まっているようにも感じられる。

 

 

 

 

図表 ブルーミントンでの占拠デモンストレーションの様子

 

3.日本人の国民性について

 アメリカにおける日本人の政治的な意識と行動に対するイメージに関して、適切な世論調査等が確認できないため、一般的な回答を行うことは難しい。英文で書かれている日本の政治、市民社会等に関する書物では、日本は官尊民卑の伝統が強く根付いているとしているものや[4]、同様に日本の弱い市民社会を描写しているものが多い。しかしその一方で、阪神大震災以降のボランティア活動の増加や2011年3月11日の東北大震災におけるボランティア、NPO等の活躍もマスメディアを通してアメリカ国民に伝わっており、必ずしも「政治や公的な事柄に対して消極的な市民という」日本人自らが意識をするような日本人像に当てはまらない積極的な日本人像も伝えられているのも事実である。例えば、Christian Science Monitor紙は「日本の地震による遺産:ボランティア」(Japan quake legacy: volunteering)と題して、震災復興に取り組むボランティアとNPO団体に焦点を当て、ボランティアの増加とその活躍についてレポートしている[5]。また、同紙は東北大震災1年後において阪神大震災以降日本に根付き始めたボランティアリズムについての記事を掲載している[6]。こうした記事はアメリカ人の日本人観に対して影響を与えているものと思われる。



[1] Charlotte-Mecklenburg Schools (CMS)には小学校88校、中学校39校、高校28校等が立地する。

[2] Russell J. Dalton(2006), “Citizenship Norms and Political Participation in America: The Good News Is … the Bad News Is Wrong”

データは下記の各種調査結果結果から、調査対象者の参加率を抽出して時系列で掲載。各データの出所が異なることから単純な比較はできない

l  Voting: average of presidential turnout (VAP), IDEA

l  Campaign activity: participated in 2 or more campaign activities, ANES timeseries

l  Civic group: member of at least one public interest group, WVS (1980, 1990, 1999)

l  Petition: signed a petition, Political Action Survey, WVS (1980, 1990, 1999)

l  Protest: participated in one of four challenging acts, WVS (1980, 1990, 1999)

l  Community action: worked with group on local problem, Verbal/Nie 1967, 1987; Social Community Survey 2000.

[3] Indiana Daily Student, POSTED AT 11:33 PM ON OCT. 9, 2011, “Hundreds of Bloomington residents join Occupy Wall Street movement in protest at Peoples Park”

http://www.idsnews.com/news/story.aspx?id=83348

[4] 例えば Makoto, I. (1999). Japan’s civil society: An historical overview. In Yamamoto, T. (eds). Deciding the public good : governance and civil society in Japan. Tokyo ; New York: Japan Center for International Exchange.

[5] Christian Science Monitor; 1/19/2005, Vol. 97 Issue 38, p6, 0p, 1 Color Photograph