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調査rep10「オゴレン・ソリュージョンズによるコラボレーション推進手法」

(オレゴン州東部における風力発電開発と自然環境保全:REECon パートナーシップ)

発生年月:2010年4月~

 

1.目的

 オレゴン州東部における風力発電所開発と希少な野生動物保護の調和を図り、持続可能な開発を目指す。

2.手法

(1)きっかけ

 近年のオレゴン州東部では再生可能エネルギーへの開発、とくに風力発電への投資・開発が増加していた。一方で、開発の影響に伴い当該地域周辺で絶滅の危機に瀕している鳥類キジオライチョウをはじめとする希少な野生動物の生息地が脅かされていた。

開発予定地周辺の公有地や森林等を管轄する行政機関(連邦・州政府および地方自治体)をはじめ、環境団体や地域住民による自然環境と開発への問題意識の高まりから、州知事が「再生可能エネルギーおよびオレゴン州東部景観保全パートナーシップ(Renewable Energy & Eastern Oregon Landscape Conservation Partnership)」、通称REEConパートナーシップの支援をオレゴン・ソリューションズに要請した。

 

(2)協力者の集め方

 REEConでは、ポートランド市内にあるポートランド州立大学の中に拠点を置くオレゴン・ソリューションズ(OS)が中立的第三者組織として支援を行った。OSはオレゴン州東部の問題に特に利害や関心を持つ参加者をREEConの会合の場に召集するために、関係者へのインタビューやアンケート調査、関連文書へのレビュー等を通じて利害関係者を特定するため「アセスメント」と呼ばれる作業を実施した。このアセスメントの成果をもとに、行政と民間の代表者からなるOSチームが結成された。チーム会議では再生可能エネルギー開発と自然環境保護の問題に関心を持つ参加者によって、議論が活発に行われていった。

 

(3)対外的な働きかけ

 REEConプロジェクトの進捗状況等については、取り組みにおいて第三者組織としてファシリテーター役を果たしたOSがウェブサイトやニュースレターを通じて一連のチーム会議の議事録、各種行政の取り組み、現状や課題に関して情報発信を行っている。またOSチーム会議でも各団体の代表者による絶滅が危惧されているキジオライチョウの生息状況に関する最新の調査データに関するプレゼンテーションが実施、環境保全活動に関するリーフレット配布など様々なアクションが行われた。またオレゴン州東部のエネルギー開発と環境保護の取り組みに関しては、広く一般市民への情報共有と共有を図るため、米国土地管理局(BLM)による公開シンポジウムの開催や風力発電所視察ツアーも実施された。このように対外的な働きかけに関してはOS自体がポータルな情報発信源としても機能している。

 

(4)支援団体の組織化

 上記の(2)協力者の集め方と同じ。プロジェクト・チームの組織化にあたってはOSが実施したアセスメントやファシリテーションでの成果が大きく貢献している。当初はオレゴン州東部の公有地を管轄する行政機関や鳥類保護の専門家が多かったが、チーム会議も回を重ねていくにつれ、これまでのチーム参加者の相互紹介等を通じて、開発コンサルタントや環境NPOなどが議論に参加・傍聴するようになってきた。

 

(5)市民の具体的行動

 OSチーム会議に参加した市民の代表者たち(特に環境NPOや開発コンサルタントなど)は、オレゴン州東部の開発と環境保護に関する現状と課題を把握するため、行政機関との情報交換と共有を図るとともに、議論を通じて互いの課題への認識や各種データのギャップを明らかにし、マップ作成においても積極的な提案を行っていった。将来の開発が予測される地域とキジオライチョウの生息地を示したChallenges & Opportunity Mapの作成にあっては、関心の高い民間の参加者から行政機関が把握していない現地情報等が提供され、官民協働でのマップ作成に一役買った。また、特に環境NPOや野生動物保護に取り組む財団等からは、ワシやタカを守るチャリティーキャンペーンや子供たちへの教育プログラムなどの紹介などもOSチーム会議の場で行われた。

 

(6)資金集めの方法

(※詳細については現在問い合わせ中で、追って補足あり)

①   OSプロジェクトは、オレゴン州政府の予算、プロジェクトに参加するその他行政機関(連邦政府や地方自治体)の負担金、および民間財団の助成金および民間企業や市民からの寄付金によって運営されている。オレゴン州では議会での最終的な決定を得る前に、環境問題や都市の再開発等について官民協働での話し合いや多数の利害関係者の特定が望まれるケースでは、OSの支援を利用することも推奨されており、OSの専門スタッフの人件費や会議場確保などのプロジェクト運営費を含むOSの運営予算は一定の割合が州政府予算で事前に承認・可決されている。そのため実際に、OSプロジェクトの参加者として召集された草の根の市民団体やNPOの代表者らが多額の運営費用を負担することはない。

②   具体的な総費用は不明である。

3.反対側の行動

 OSが支援するREEConパートナーシップのプロジェクトそのものへの目立った反対行動は見られないが、風力発電開発そのものを懸念・反対する声はある。例えば、風力発電周辺の農業関係者などは地下送電ラインの拡大に伴う農作物や地下水への影響、周辺住民からは風力タービン駆動から発生する低周波(ノイズ)による健康への影響、環境保護団体からはバードストライクによる猛禽類の死亡やキジオライチョウの生息地への悪影響などを懸念する環境保護団体や地域住民が一定程度存在している。

また一方で開発サイドの一部からは、REEConような官民協働での開発の管理および環境保護の取り組みが、実際にオレゴン州東部の自然環境改善(例えば、キジオライチョウの生息地や個体数の改善)に貢献しているのか、その手法や科学的客観性を疑問視する声も挙がっている。

4.効果・成果

 取り組みの成果として、官民セクターが協力して作成したChallenges & Opportunities Map (以下「マップ」と表記)がある。このマップはREEConパートナーシップの成果の一つである。マップはオレゴン州東部の危機にさらされている野生動物の生息地域や将来の風力発電開発によって影響を被る可能性のあるエリアを予測・特定している。このマップは開発業者や一般市民に対して広く利用可能なものであり、オレゴン州の希少な野生動物の保護とエネルギー開発の現状と課題についての理解や関心を高めるものとして期待されている。

5.特記事項(当事例に関連して分かる範囲で簡潔に)

(1)最終的な実施主体、中心組織

 オレゴン・ソリューションズ(OS)。OSはオレゴン州ポートランド市にあるポートラン

ド州立大学(PSU)内にある National Policy Consensus Center (NPCC)が運営するプログラムの一部門であり、行政、企業、NPO/NGO、環境団体、そして一般市民の参加と協働を通じて、公共性の高い地域問題の解決を支援する非営利組織である。これまでにOS はオレゴン州内のエネルギー開発、福祉政策、住宅開発、空港開発、森林保護、洪水対策、土地利用など 60 件以上のプロジェクトを支援している。

 

(2)取組みの特徴

 REEConにおける官民協働は、行政主導による参加者の固定化や議論が行政や特定の関係者によって恣意的に運営されることを防ぐ、と同時に行政や市民だけでは把握できない利害関係者やリソースを把握するためにOSという第三者機関が支援者の役割を果たし、中立的な交渉と話し合いの場の形成を促進した。