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調査rep5 「コンピュータ専門家による学校区ネットセキュリティの改善」

発生年月:2011, 9 ~ 2011, 9(教育委員会の承認)

1. 目的

 生徒が学校で提供されるグーグルアプリを活用する際の親の承認について電子メールで回答することをやめさせる。

2. 手法

(1)きっかけ

 オレゴン州タイガード市に住むアイク・アイゼンハワー氏は、コンピュータ専門家として日頃から息子たちにインターネットやコンピュータの危険性について注意を促してきた。

ところが、2011 年9 月からの学期以降、息子たちが通うタイガード・トゥオラタン学校区から子どもたちの氏名、生年月日、通学している学校、生徒番号を問い合わせる電子メールが来た。専門家の目からすると、それに回答することのセキュリティ上の問題を無視した方法だったため、直ちに息子たちの通学する学校、及び、学校区に連絡し、電子メールでの回答をやめるよう要請した。

学校区側は、その回答に記載した内容は学校区以外の誰からも視認不可能であると考えていたが、コンピュータ専門家であるアイゼンハワー氏からみると、回答要請メールにリンクされた回答のためのURL は特にセキュリティ上の対策が講じられているようには見えず、安全なものではなかった。

(2)協力者の集め方

 いろいろな機会に知り合った関心のある親たちに声をかけ、引き込んでいったと思われる。

 ※アメリカ(ポートランド市周辺)では、授業参観など、学校に行った機会に割とすぐ会話がはずみ知り合いになることが多いので、そういった機会に知り合っているものと思える。日本でも子どもの友達を通じて親同士が知り合うケースは多いと思うが、日本の場合はたいてい母親同士で、父親同士が知り合いになる機会は少ないように思う。ちなみに、PTAなどの会合も夜行われるのが普通。

(3) 対外的な働きかけ

 同じ学校に子どもを通わせている関心がありそうな親たちに注意を促し、「学校区」※に電子メールでの生徒の個人情報入力をやめるよう働きかけた。

※「学校区」

アメリカでは「市」と言っても日本のように多数項目の対市民行政サービスをしていることはまれで、消防・救急、都市計画、公園管理など、さまざまな行政サービスについて、special district という特別な政府を作って供給するケースがほとんど。

「学校区」はそうした特別政府(特別行政区)の代表格で、「市」から切り離されて運営されているのが一般的で、日本で言う「教育委員会」がそれぞれの学校区に置かれ、公選の教育委員が運営の責任をもつ。したがって、「教育委員会」は、事実上「学校区」という地方政府の議会であると言って良い。

全米のごく一部の市で市長(市役所)が学校教育を担当するところがないわけではないが、一般には、義務教育学校教育(K-12)は、市(市長)から完全に独立した学校区(教育委員会)が担当している。

(4)支援団体の組織化

特に支援団体を組織化するに至らなかった。彼自身が退役軍人省退役軍人技術資源センターの全国主任であり、ポートランド州立大学のコンピュータシステム工学教授でもあるという専門性を備えた人物であったため、支援団体を組織化しなくても専門的見地から一定の影響を与えることができたためと思われる。

(5)市民の具体的行動

2011 年9 月14 日、彼と妻、及び、他の親たちが学校区の教育長であるロブ・ザクトン、情報主任のスーザン・ジェームズ、教育委員と面会し、コンピュータセキュリティ上の問題を話し合った。

(6) 資金集めの方法

特に運動のための資金を集めた形跡は見られない。

3. 反対側の行動(見解)

 不況による税収の悪化から学校区はさまざまな経費節減に努めるよう要求されている。生徒がグーグルの教育用無料アプリを活用することは、生徒の学習到達度をいち早く把握する上で大いに役に立つものである。

グーグルはその活用について、保護者の同意を求めている。近隣の他の学校区が行っているような従来型の紙による同意書の提出を求めた場合、それをコンピュータ上に学校職員などが再入力しなければならず、コンピュータによる承諾書回答と比較すると、学校区には財政上の負担となる。電子メールで呼びかけ、ネット上から簡便に回答が可能な今回の方法は教職員の負担軽減と財政上のメリットから有効な方法である。

4. 効果・成果

 アイゼンハワー氏もコンピュータ専門家として、学校がこのようなアプリを利用して学習効果を高めようとする方法には賛成するが、その際に、学外、学校区外からの生徒情報へのアクセスを防ぎ、プライヴァシーなどの情報流出が生じないようコンピュータセキュリティ上の安全策を強く講ずることを求めた。

比較的早く学校区の教育長らと問題について話し合うことができ、電子メールでの回答要請にしたがって回答するサイトから生徒番号の入力は直ちに削除された。

また、学校区側との話し合いにより、グーグルアプリに関し、生徒たちの利用制限、より安全なパスワードの生成、K-8 生徒の学校区外への電子メール発受信制限、など今後とも安全なインターネット活用について、アイゼンハワー氏が助言を行うよう要請された。

5. 特記事項

(1) 実施主体は、専門的能力を持った親

(2) 専門家としての能力を活用し、学校区にコンピュータ活用の安全性強化を求めた

(3) 学校区側も苦情申し立て者の専門性を尊重し、直ちに改善への努力を見せた

参考資料:

Wendy Owen, “Tigard-Tualatin School District improves computer security after parentscomplain,” The Oregonian, OregonLive.com, September 15, 2011.