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調査rep2「小規模事業者の落胆から発した市の都市計画手数料値下げ」

発生年月:2011, 9 ~ 2011, 11(市議会コミッショナーの決断)

1. 目的

 小規模事業のゾーニング変更手数料を引き下げる

2. 手法

(1)きっかけ

 オレゴン州ポートランド市南東部に小さな美容院を営むジョン・ホプキンス(男性)は自宅兼用の美容院を改修して6 人ほどのスタイリストを新たに雇

用できる規模の美容室にしようとした。建物そのものの拡張は行わず、内部の改修だけを行い客の椅子を増やそうとしただけである。ところが、こうした改修を行って事業規模をわずかに拡大する場合でも、ポートランド市のゾーニング変更申請手数料が約3 万ドルもすることが分かり拡張をあきらめた。

住宅地といっても、美容院の隣の土地と道を挟んだ向かい側は商業地域である。わずかな土地利用目的の変更と、2008 年に提案された138 エーカーのゴルフコースへの目的変更とが同じ手数料になっていることも問題とされた。

(2)協力者の集め方

 地元の新聞社が取材をして記事を書いた。この記事に共感した人びとが、投書や電話などで市役所、市議会議員に働きかけた。

(3) 対外的な働きかけ

 メディアが実名で現状と課題を取り上げたため、これまでは関心を持たなかった普通の市民の大きな関心(ゾーニング変更手数料が他都市と比較して高額であること)を呼ぶとともに、担当の市議会議員もこの問題を重要課題と考えた。

 

①オレゴン州は、1970年代から州政府が、州全体の土地利用計画を強くコントロールしている。各市や土地利用計画を作成する特別行政区(ポートランド周辺は「Metro」という広域政府(日本の広域連合的なもの)が担当している)は、当該地域の土地利用計画を州の基準にしたがって作成する義務がある。

この制度ができて以降、当然ながら「私権の制限」(日本に比べるとかなり大幅な制限)になるので、具体的なケースを巡って州や自治体を訴えるケースや、州民投票でこの制度の規制を緩和するよう求める動きが絶えないが、にもかかわらず、大枠ではこの土地利用の規制制度は生き残ってきた。

②ポートランド都市圏については、基本的にはMetroが土地利用計画を策定するが、それに応じてゾーニングの具体的変更を行う手続は各市が行っている。その際の手続で、ポートランド市は、比較的多額の手数料を賦課しているということ。これは、伝統的にポートランド市は自然環境を守ることと、都市の発展とをバランスさせることに腐心し、その際、どちらかと言えば自然環境保護を重視してきていることと関係するかと思われる。

70年代には、ある高速道路計画を市民運動ではねのけ、当該用地を公園にしたこともある。ただ、そのバランスを巡っては、現在でもさまざまな議論がなされている。

そうした流れの中で、「市民や市議会議員の関心を呼んだ」ということになるだろう。

(4)支援団体の組織化

 特に支援団体が組織化されたわけではない。

(5)市民の具体的行動

 地元の新聞記者が記事にして、市役所や特に市議会議員に問題がよく見えるように工夫した。記事を書いた記者は、アメリカのいくつかの都市の同様の申請手数料を調査し、ポートランド市の手数料が他の都市に比較してもきわめて高額であると指摘した。例えば、ミネアポリス市の場合は同様の手続を踏むが、一万平方フィート以下の場合の手数料は1300ドルであり、ポートランド市周辺の市も概ね5000 ドルほどであるという。ポートランド市の場合、申請手数料は、大規模開発の場合と今回のような小規模変更の場合で区別していないとのことも記事で明らかにした。

ポートランド市には小規模営業による雇用者が多く、日頃スモールビジネスの重要性を語っている同じ市当局が、自営業者の小規模な業務拡張の障害になっていると、記者は疑問を呈した。

※新聞記事等からは、他の市民が特別に具体的に行動した形跡は認められない。

新聞記事を受けて、市議会議員がさっさと対応したと見られる。

(6) 資金集めの方法

特にこのために資金を集めた形跡はない。

3. 反対側の行動

 なぜ高額の申請手数料(最終的には市議会の議決が必要なので申請が認められる保障はない)が必要かについて、市役所の担当者は、文書上の調査や審査のみならず、近隣住民からのヒアリング、議会手続、さらには州当局への申請手続に必要なのだと回答している。

4. 効果・成果

 記事を読んだ市民からの問い合わせに、ポートランド市議会議員ダン・ソルツマンは、記事を書いた新聞記者の調査に一部反論しつつも、この訴えをもっともだと理解した。

記事から約5 週間後に、ポートランド市の土地利用担当部局は、軽微なゾーニングの変更手数料を約1 万5 千ドルに減額することとし、直ちに実行に移した。このため、ジョン・ホプキンスは、ほぼ半額の手数料で事業の拡張を行えることとなった。もちろん、この変更は、同様の小規模事業者にも適用される。

ただし、当該拡張について、近隣自治区(近隣居住者)の反対がないことを申請者は証明しなければならない。

5. 特記事項

(1) 運動の実施は、小規模事業者と新聞記者が連携して行われた。

(2) 新聞報道により、市議会議員が動いたところに特徴がある。

(3) 新聞記者の調査報道が市役所当局・市議会議員を動かした。

参考資料:

○ Molly Young, “A huge cost of doing small business,” The Oregonian, October. 23, 2011, D1

& D4.

○ Molly Young, “Portland cuts small-business fees,” The Oregonian, November. 29, 2011, C1-2.

○ Dan Saltzman, “Portland zoning costs: City working on tiered fee system to aid businesses,”

The Oregonian, November 26, 2011.

○ Therese Bottomly, “The Oregonian’s Molly Young gets results on rezoning costs,” The

Oregonian, November 27, 2011.__