• トップページ
  • ご挨拶
  • 研究所紹介
    • 公共経営研究部会
      • 地域主権研究センター
    • 公共政策分析部会
  • アクセス・お問い合せ

調査rep1「再生可能エネルギー(風力発電)に対する市民運動」

発生年月:2003年6月〜2011年12月

1.目的

 マサチューセッツ州におけるクリーンエネルギー促進に関し、州議会のケープコッド(Cape Cod)における風力発電プロジェクト「ケープウィンド・プロジェクト」(The Cape Wind Project)を承認させる

2.手法

(1)きっかけ

 ケープコッドにおける洋上風力発電は、再生可能エネルギーを促すことが可能である一方、ツーリズムで知られるナンタケット島の外観を崩し、さらには生態系を損なう怖れもあるということから、2001年より住民をメンバーに含む民間非営利組織「ナンタケット海峡を守る同盟」(The Alliance to Protect Nantucket Sound)が設立され、同プロジェクトに反対した。

その結果、当初のプロジェクトで170個の風力タービンを設置しようとしていたが、2001年には130個へと減らされることになり、プロジェクトの縮小化が進んだ。

 

(2)協力者の集め方から支援団体の設立へ

 プロジェクトの縮小を懸念したローカルグループ、引退したエンジニア、フェリーボートの船長、牧師、個人事業者、そして大学生が集い、2003年6月にクリーンエネルギー促進を目指す「クリーンパワー・ナウ」(Clean Power Now)を発足させ、ケープ・ウィンドのプロジェクトを支援することとなった。当初のグループは非常に小さなグループであったが、米国の民間非営利組織を設立する手順が柔軟であることから、協力者が少数である段階から、組織化を図ったと考えられている。

 

(3)対外的な働きかけ

 「ナンタケット海峡を守る同盟」に比較し、「クリーンパワー・ナウ」は非常に小規模であり、公共の目にもなかなか止らないため、草の根的な手法で情報を拡散する必要があった。そのため、基本的にはメンバーシップの拡大、ケープウィンド・プロジェクトの環境に与える影響を科学的に調査した情報を広めること、といった点に主眼を起き、活動を進めていた。

 例えば、メンバーシップの拡大という点においては、登録費は無料としていた。資金節約のために、郵便ではなく極力電子メールを活用してのメーリングリストを作成していた。さらに、情報の拡散という点においては、ニュースレター「The Vision」の配信、タウンミーティングへの参加、ビジネスグループやローカルの専門家等との会合、そして組織化された後には新聞での広告といった手法を使い、メンバーを拡大させていった。その結果、2003年当初は設立者のみのメンバーではあったが、2011年の時点で12,000人にまで到達した。

 

(4)市民の具体的行動

 メンバーによる情報の拡散が基本となるが、2つのレベルで情報拡散が行われた。一つは、 政治家に対して、手紙、電子メール、ファックス等による働きかけであった。具体的にはケープウィンド・プロジェクトを促進させること、プロジェクトが環境に与える影響が極めて少ないこと、さらには代替エネルギーとしての風力発電が環境に良いこと等を訴えた。毎月のニュースレターに特定の政治家や団体の名前、住所、電子メールアドレス等を記載し、メンバーにその政治家にコンタクトするよう促している。もう一つは、市民同士の情報交換であるが、さらにニュースレターや電子メールを通して、現在まで調べたケープウィンド・プロジェクトに関する科学的根拠、さらに反対派の議論に対しての反論、地球規模からみた石油や化石燃料の代替エネルギーの重要性についての情報を全てインターネット上に載せることにより、メンバーでない市民に対しても公開していた。

 

(5)資金集めの方法

 「クリーンパワー・ナウ」は、独立した草の根の団体であり、政府といった組織からの補助金は受けていない。つまり、寄付金とプロジェクト助成金のみで成り立っていたのである。メンバーシップが無料ということもあり、寄付金には幾つかの工夫をこらしていた。例えば、2003年当初では、10ドル以上の寄付金で「バンパーステッカー」を一枚無料で、35ドル以上でTシャツを無料で配ることとしていた。2010年になると、25ドル以上で100枚の「YES」ステッカー(ケープウィンド・プロジェクトに「YES」という意)を、50ドル以上で140の「YES」ボタンを、さらには100ドル以上で90枚のDVDを無料で配布するようにしていた。また、ニュースレターには常にボランティアの募集をし、運営をしていた。しかし、2011年末の最後のレターによると、資金難に陥っていることを明確に述べており、資金のやりくりが非常に困難であったことを表している。

3.反対側の行動

 「ナンタケット海峡を守る同盟」は2001年に発足後、様々な支援を取り付けた。その中には、バーンステーブル町、マサチューセッツ州工業連盟、環境責任公共組合、漁業組合等を含めるとともに、ケープコッドに住む高所得者、石油長者のウィリアム・コック、前マサチューセッツ州知事で共和党側の現在の大統領候補者ミット・ロムニー等が支援を行った。特に、全米で有名なジャーナリスト、アンカーマンであるウォルター・クロンカイトも、当初「ケープウィンド・プロジェクト」に反対をし、数々のプロジェクト反対に関する宣伝を行っており、支持者を集めた。しかし、2003年8月に、クロンカイトが「プロジェクトの価値を再考する必要がる」と述べ、反対の立場を保留することとなった。これは、反対派が持つ環境への影響の判断が正確でない可能性があることから、「研究が進める必要がある」ということからの判断であった。さらに、石油長者のウィリアム・コックは、代替エネルギーに反対するという政治的意図があるのではないかと批判されている。現在、同団体は巨額資金提供者がいるということから存続はしているものの、資金難に陥っているとの見方もある。

4.効果・成果

 2010年には米国内務省より本プロジェクトの許可がおり、マサチューセッツ州議会によって可決され、プロジェクトを進めることとなった。その結果、当初の目的を果たすこととなり、2011年12月31日をもって「クリーンパワー・ナウ」は8年間の活動を終え、解散することとなった。しかし、プロジェクト反対派の「ナンタケット海峡を守る同盟」は、現在もその活動を続けており、2011年の時点でマサチューセッツ州は財政的困難も生じており、工事に着手することができていない。他方で、「クリーンパワー・ナウ」に代わる市民団体も出てきており、市民同士の10年間の闘争は現在も続いていると言える。

5.特記事項

(ア)   最終的な実施主体、中心組織

民間非営利団体である「クリーンパワー・ナウ」

(イ)   取組みの特徴

市民の有志が設立した組織に他の市民も参加し、州のプロジェクトを押し進めた例。

(参考資料)

l Clean Power Now, ホームページ

http://cleanpowernow.org/

l Boston Globeページ

http://www.boston.com/news/local/articles/2003/08/29/cronkite_urges_full_review_of_wind_farm_proposal/